ビオトープにおすすめの肥料は?液肥は必要?|水草・睡蓮・メダカが“元気に育つ”栄養設計とコケ・ドブ臭ゼロのコツ
屋外・ベランダのビオトープは、日光と自然循環で『放置でも育つ』と思われがちですが、栄養の設計がズレると「枯れる・葉の変色・コケだらけ・水が臭う」の四重苦に陥ります。本記事では初心者の方にも分かるように「栄養の基礎」、「肥料、液肥の選び方」、「水草と生体のバランス」、「コケ・ドブ臭ゼロ運用のコツ」を解説します。
目次
肥料が要らないビオトープ/要るビオトープ
ビオトープに肥料(栄養)が必要かどうかは、環境によります。ここでは簡易的な判断基準として、それぞれの条件と理由を押さえます。
肥料が「不要」寄り
以下のような条件の場合は、魚の排泄物=アンモニア由来の栄養が自然の液肥として効きやすいため、肥料は不要なことが多いです。むやみに追肥をするとコケが発生する可能性があります。
- 魚が多く、給餌量も多い
- 水量が小さい
- 濾過が弱い
肥料が「必要」寄り
逆に以下の場合は、足りない栄養素(とくにK・鉄)をピンポイントで補填するのがおすすめです。
- 魚が少ない
- 魚なし、エビのみ
- 睡蓮や水草の葉色が薄い、開花が弱い

肥料の基礎
三大栄養素といわれているのが「N(窒素)」、「P(リン)」、「K(カリウム)」です。そのほかにも様々な微量元素が存在します。ここでは基本を押さえます。
- N(窒素):葉の“緑”と新芽の伸びを助けます。“観賞魚の糞+日光”によって供給されます。過多で糸状コケ・アオコを誘発します。
- P(リン):エネルギーを供給し、根や新芽の伸びを助けます。餌に多く含まれます。過多でコケを誘発します。
- K(カリウム):細胞を強化し、厚みや丈夫さを助けます。ビオトープで不足しやすい栄養素です。
- Fe(鉄):クロロフィルを合成し発色を助けます。ビオトープで不足しやすい栄養素です。
- Mg、Mn、B、Znなど:微量で構いませんがバランスをとるとよい栄養素です。
屋外ビオトープでは特にKとFeが最初に尽きます。ここを埋めるのが上手な液肥・肥料の運用といえるでしょう。
液肥と底肥(固形肥料)の使い分け
肥料には栄養素の違いだけではなく、液体・固体など、用途によって形状にも種類があります。ここではそれぞれの特徴と役割を解説します。
- 液肥:液体なので、水全体に速く浸透し効きます。葉色の改善や微量要素の補充に最適といえるでしょう。過多はコケ誘発の原因になるため、添加は少量・こまめが鉄則です。
- 底肥(固形):個体なので、用土に埋めることで根からじっくり効いていきます。鉢植えの睡蓮や抽水植物など、根を張る植物に最適といえるでしょう。水中への溶出は緩やかなので、局所(ピンポイント)で添加することができ、リスクは小さいと言えます。
このように肥料の形状や栄養素にはそれぞれ特徴があり、水草や生体、ビオトープなどの環境に応じて適切なものを使用する必要があります。安易に家庭園芸用の肥料を導入するのではなく、しっかりと設計された肥料を選択しましょう。
植物品種別の最適解
肥料タイプの特徴から、原則は睡蓮などでは底肥(固形)+全体へ薄めの液肥。浮き草では、K/Fe中心の液肥をほんの僅かに添加するのがおすすめです。ここでは代表的な品種別に解説します。
睡蓮(スイレン)
- 目的:花数・花径アップ、葉の厚み
- 施肥:底肥を主、液肥は鉄・微量元素の追い肥
- サイン:葉が薄い/小さい=K・Fe不足、花が上がらない=底肥不足
抽水植物(パピルス・ハナショウブ等)
- 目的:茎の太さ・色艶
- 施肥:鉢元に少量の底肥、全体へ薄い液肥
- サイン:茎徒長=N過多
浮き草(アマゾンフロッグピットなど)
- 目的:ロゼットの厚み・根のボリューム
- 施肥:液肥中心(K・Fe)
- サイン:葉脈残し黄変=鉄不足
沈水植物(マツモ等)
- 目的:節間短め・色濃く
- 施肥:水中の総栄養バランス
- サイン:N過多=糸状コケが絡む
施肥のタイミング
詳細の説明は省きますが、施肥のタイミングは朝か夕方がおすすめです。強日照時間の直前(昼)は避けましょう。理由は下記のとおりです。
- 藻類が活発化し、コケの引き金になりやすい。
- 強光直前に栄養を入れると、光合成ピーク時に微量要素(特に鉄)が酸化・沈殿しやすく吸収効率が下がる。
- 朝や夕方の穏やかな光量の時間帯なら、栄養がじっくり吸収されやすい。

メダカ・金魚・ミナミヌマエビと肥料の相性
肥料は植物の成長をメインに成分が考えられているため、メダカや金魚、エビなどへの影響については、事前に確認をする必要があります。ここでは一般的な肥料での注意点を確認します。
- メダカ/金魚:急激な濃度上昇には注意が必要です。液肥は規定の1/4から始め、様子を見ながら1/2程度までに抑えましょう。
- ミナミヌマエビ:銅過敏に注意が必要です。特に園芸用の肥料で銅含有のものは避けるべきです。水質変化にも弱いので、水換えは少量高頻度で行うのがおすすめです。
コケ暴走&ドブ臭の原因と対策
ビオトープ管理で頭を悩ませることが多いコケの大量発生と、悪臭の発生について、原因を知ることで対策ができます。
コケ大量発生の原因と対策
- N・P過多:餌・糞が蓄積しないよう、こまめに水換え、掃除をする
- 長時間の直射強光:すだれなどで日陰を作る、照射時間を8h以内に抑える
- 水の停滞:水面が停滞しないよう、弱い水流を確保する
ドブ臭発生の原因と対策
- 底床・鉢土で嫌気ゾーン化:表層を撹拌、換水、根元のヘドロを洗う
- 硫化水素の発生:日照短縮、活性炭を使用
水草のよくある症状と栄養素の関係
水草の不調の原因は、栄養素の観点で説明できることがあります。代表的な症状と栄養素の関係をまとめます。
- 新芽が黄色/脈緑=Fe不足
- 葉縁が破ける=K不足
- 徒長・薄葉=N過多/光不足
- 白いモヤ/糸状コケ=N/P過多
まとめ
水草やビオトープの状態と栄養素は密接に関係しています。そのため、肥料を添加するか、しないかは環境を見て判断する必要があります。また、水草やビオトープで不足しがちな栄養素、必要な栄養素があるため、安易に家庭園芸用の肥料を使うのではなく、しっかりと設計された肥料を選択することが重要です。


