水槽の「水質」について初心者向けに解説|pH/硬度/硝酸塩などの基本から測定、悪化の原因、改善方法まで
アクアリウムでは「水質が良い」、「水質が安定している」などとよく言われます。水質は生体が健康的に暮らすために重要な要素です。その本質を理解するためにはまず、水質とは何か・水質が良いとはどういう状態かを知る必要があります。そして現状を把握し、対応することができるようになると、大きく失敗を減らすことができます。
目次
水質とは?
水槽における水質とは、大きく分けて次の2つのことを指します。
- 水の属性(性質):pH、GH/KH(硬度)、CO2 など
- 汚れ(毒性)の目安:アンモニア、亜硝酸、硝酸塩、塩素など
これらの要素が、生体にとって安全・良い状態を維持していることを「水質が良い」、「水質が安定している」と呼びます。
つまり水は「透明=安全」ではありません。水が透き通っていても、魚やエビに有害な成分が溶けていることがあります。これは肉眼だけでは判断が難しいため、水質は試験薬(テスター)で数値化して把握するのが基本なのです。
水質に影響する要因
では、水質にはどういったことが影響するのでしょうか。実はそれぞれの要素に影響する主な要因があります。
これを理解しておくことで、水質を悪化・急変させないよう管理を行うことができます。逆に水質が悪化・急変した際には、要因となるものや行動を取り除いてあげることができるようになります。
pHに影響する主要因
pHは「水が酸性寄り(pHが低め)か、アルカリ寄り(pHが高め)か」を表します。生体によって適切な範囲は異なりますが、淡水魚では中性〜酸性寄りが適していることが多いです。pHは主に次の要因で動きます。
- 底床
ソイルは酸性寄りに傾けやすく、サンゴ砂はアルカリ寄りに傾けやすい傾向があります。 - 石
青龍石など、一部の石は水質に影響します(硬度やpHを上げやすい)。 - CO2
CO2が多いほど酸性寄りに、CO2が抜けるとアルカリ性の方向に動きやすいです。 - 生体の量・餌・汚れ(有機物の分解)
フンや餌の残りが分解される過程で酸性に寄ることがあります。 - 水道水
地域の水道水の性質によって、水換えだけでpHが動きます。
GHに影響する主要因
GHは総硬度とも言い、カルシウム・マグネシウムなどのミネラルがどれだけ含まれるかを表します。pHと関係するミネラルの濃さという認識で良いでしょう。高いと硬水、低いと軟水と呼ばれます。硬水ほどアルカリ性に寄り、軟水ほど酸性に寄ります。GHは主に次の要因で変化します。
- 水道水
地域の水道水によって硬度が異なります。 - 底床、レイアウト素材
サンゴ砂・貝殻・一部の石を使用すると、GHが上がることがあります。 - 栄養剤、水草用添加剤
製品によっては硬度に影響する成分が含まれます。
KHに影響する主要因
KHは炭酸塩硬度と言い、「pHが急変しにくくなる力(緩衝能)」の目安です。GHと似ていますが、高いと水質が急変しにくい(硬水・アルカリ性に寄る傾向がある)と覚えておけば良いでしょう。主に次の要因で変化します。
- 水道水
地域の水道水によって異なります。 - 底床、レイアウト素材
サンゴ砂・貝殻・一部の石を使用すると、KHが上がる場合があります。 - ソイル
KHを消費していく(下げる)方向に働き、pH変動が大きくなるケースがあります。
CO2に影響する主要因
CO2は二酸化炭素で「水草育成に重要」なだけでなく、pHにも影響します。主に次の要因で変化します。
- CO2添加
方式と添加量で濃度の安定性が変わります。 - 水面の揺れ
エアレーションなどで水面が強く揺れるほどCO2が抜けやすく、濃度は下がりやすいです。 - 水草量と光
光が強い・水草が多いほど光合成が行われるため、CO2は消費されます。そのため日中と夜間でも変動します。 - 生体量
魚や水草は呼吸によりCO2を出します。生体が多いほど濃度は高まりやすいです(ただし水草が多い場合は光合成も行われるため、昼は濃度が下がりやすい)。
アンモニアに影響する主要因
アンモニアはNH3/NH4とも言い、強い毒性があるため「出たらまずい」代表格です。主に次の要因で変化します。
- フン・尿・餌の残り(有機物の分解)
生体が増える・餌が多いほど発生します。特に立ち上げ直後は、ろ過バクテリアが育っていないため処理が追いつかず、濃度が高まりやすいです。 - フィルター停止・ろ材の目詰まり
ろ過が回らない/流量が落ちると、 バクテリアの処理能力が急落し、濃度が高まります。 - 酸欠
酸欠もバクテリアの処理能力が急落し、濃度を高める原因となります。
亜硝酸に影響する主要因
亜硝酸はNO2とも言い、毒性があります。ろ過バクテリアにより、アンモニア→亜硝酸→硝酸塩の順で硝化されるため「ろ過が途中まで進んでいる」サインです。立ち上げや崩壊時に出やすいと言われます。
- 立ち上げ途中(硝化が未完成)
アンモニアは減ったのに亜硝酸が出る、という典型パターンがあります。 - 過密・餌過多
アンモニアが多いほど、その後の亜硝酸も増えやすいです。 - フィルター能力不足・ろ材不足
生体量に対してろ過が弱いと滞留します。 - 掃除や洗いすぎでバクテリアを落とした
ろ材を水道水で洗う、掃除しすぎる等で急に出ることがあります。
硝酸塩に影響する主要因
硝酸塩はNO3と言い、硝化の最後に出る物質です。そのため多少検出されるのが必然ですが、溜まると慢性的なストレス・不調・コケの原因になります。
- 水換え不足
一番ありがちな上昇要因です。 - 餌の量・生体の量
入力(餌)が多いほど最終的に硝酸塩として蓄積します。 - 水草が少ない
吸収役(水草)がいないと溜まりやすいです。
塩素に影響する主要因
塩素はカルキとも言い、アクアリウムでは水道水由来の消毒成分を指します。生体にダメージを与えます。
- 水道水
水換え時に水道水をそのまま入れると、生体にダメージが出ることがあります。
初心者向け最低限の確認リスト
全ての項目を測定し適正値を保つのが理想ですが、初心者にはなかなか難しい部分もあります。ここでは経験則に則って、最低限確認すべき項目について解説します。
- 塩素(カルキ):生体にダメージが出るため必ず対応します。測定せずとも、カルキ抜きを適正に使うことで手軽に除去できます。
- アンモニア(NH4/NH3):硝化が回っていないといつか失敗します。立ち上げ時は必須、調子が悪い時も検査すると良いでしょう。
- 亜硝酸(NO2):アンモニアと同様です。
- 硝酸塩(NO3):アンモニアと同様です。
- pH:生体の調子が悪い時の対応で良いかと思います。
- KH(炭酸塩硬度):pHが安定しない時は測定してみます。
水質検査の順番(手軽版)
ここでは最低限、初心者が失敗しない順番を解説します。
- カルキ抜きを適正に使えば測定は不要です。
- 異変(呼吸が早い/コケが出る/水草の発色が悪い)を先に見て原因(酸素不足/硝酸塩蓄積/CO2不足など)を推定し対策する。
- わからない場合は、毒性系(アンモニア→亜硝酸)を最優先で測る。
- 次に 硝酸塩・pH・KHを測る。
水質検査キット・測定器の選び方(比較表)
水質の測定には試験紙や試薬など様々な種類があります。それぞれにメリットとデメリットがありますので整理します。自分に合ったものを選びましょう。
| 種類 | メリット | デメリット | 向く人 |
|---|---|---|---|
| 試験紙(ストリップ) | 速い・安い | 精度が粗い/色判定ブレ | とにかく習慣化したい |
| 液体試薬(滴定/比色) | 精度が高い | 手間・保管/期限 | 原因究明したい初心者〜中級者 |
| デジタル(pHメーター等) | 数値が読みやすい | 校正/電極管理が必要 | pH管理を継続する人 |
水質が悪いときの「逆引き」改善ガイド
ここでは、よくある異変、原因、対策について具体例を解説します。
異変①魚が苦しそう・水面でパクパク
ありがちな原因は、アンモニアや亜硝酸など毒性物質です。
- 立ち上げ直後でバクテリアが未成熟
- 餌の与えすぎ、過密飼育、掃除不足
- フィルター停止・目詰まり(流量低下)
対策としては、即効性の観点から下記を実施してみます。
- 水換え
- 餌を一旦止める、減らす
- ろ過の復旧(流量・詰まり・停止を確認)
異変②コケが増える・水が変色・調子が悪い
ありがちな原因は、硝酸塩の蓄積です。
- 餌、フンが多い(給餌過多、過密飼育)
- 水換えが不足
- 水草が少ない
対策は下記です。コケの場合はライトの照射量を減らしてみるのも良いでしょう。
- 水換え
- 生体、餌を減らす
- 水草を増やす(吸収役を作る)
異変③毒性物質は無いのに調子が悪い
硝化はきちんと回っていて、目に見える原因(水温など)は無いのに調子が悪い時は、その他の要素を疑いましょう。ありがちな原因は下記の通りです。
- 生体の調子が悪い:pHの不適合、急変
- 水草の発色が悪い:CO2不足、栄養素不足
- 魚の呼吸が早い:酸素不足
対策はそれぞれ下記の通りです。
- pHを調整する:原因(高すぎならサンゴ石など)を取り除く。要因(高すぎならソイルなど)を追加する。
- pHの急変を防ぐ:KHを上げる。
- 原因に応じてCO2、液肥、エアレーションなどを追加する
クエン酸でpHを下げるのはアリ?
クエン酸でpHを下げられるかという質問があります。結論としては可能ですが、要注意です。
pHは「1」変わると性質が10倍違う、といった情報もあり、急激なpH変動は避けるべきです。また効能の持続性にも疑問があります。最低限下記の対策は行いましょう。
- 水槽に直接ドバッと入れない
- 測定しながら急変を防ぐ
- pHだけでなくKHも測る
立ち上げ期に水質で失敗する理由
立ち上げ直後は、ろ過バクテリアが安定していないため、アンモニアが一時的に上がることがあります。いきなり魚を導入して全滅してしまったというトラウマがよくあるのもこれが理由です。
また生体の調子が悪い場合に、こなれた水槽の水を借りると立て直すことがあるのも、完成した水質がいかに大事かを物語っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 水質検査は毎日必要ですか?
基本的に必要ありません。必要な時に必要な項目でOKです。ただ、定期的に目に見えない汚れを確認する、という考え方は失敗を予防するために合理的です。
Q. pHは理想値に合わせるべき?
もちろん理想はそうですが、現実には難しいでしょう。適応値の幅に収める程度で考えて良いと思います。それよりも急変させないことを優先してください。
Q. 活性炭で水質は良くなりますか?
有機物の吸着には有効な一方、水中のアンモニア・亜硝酸・硝酸塩の吸着は期待しにくいとも言われます。様々な商品があるので、水質を測定しながら効果を試してみるのも面白いかもしれません。
まとめ
アクアリウムにおける水質の知識は、生体が住みやすい環境を整えるために、必須で押さえるべきです。複数の要素が絡んでおり、初心者の方はとっつきにくいかもしれませんが、暗記の必要はありませんので着実に学びましょう。
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