浮き草の育て方 完全ガイド|かわいく増やすコツと枯らさない基本【初心者・ビオトープ対応】

浮き草は、水面に浮かびながら根を水中へ伸ばす水草の総称です。水槽やビオトープに浮かべるだけで気軽に育てられるため、とても人気があります。飼育は難しくありませんが、条件が整わないと元気がなくなったり、枯れてしまったりします。この記事では、初心者が浮き草を簡単にかわいく、きれいに育てるために必要な基本情報を解説します。

浮き草を上手に育てる5大条件

浮き草は春~夏にかけて、基本的には水面に浮かべておくだけですくすく育ち、増えていきます。しかし秋~冬には葉が黄色くなって枯れてしまい、見た目も弱弱しくなってしまいます。真夏の強い直射日光に当てるのが一番と思われがちですが、実は一番調子が良いのは初夏や夏の終わりです。それは浮き草が元気に育つためには光だけではなく、次の条件が関わっているからです。

  1. :高い光量を好むが、強すぎる直射日光は葉焼けや枯れの原因になる。
  2. 栄養:水中根と葉面から素早く栄養を取り込む。
  3. 温度:多くは20–28℃で安定。日本の夏は30~35℃を超えるため、水温が上がりすぎる。
  4. 通気:蒸れに弱い品種が多い。風通しの良い場所で生き生き育つ。
  5. 水流:葉が沈むことはNGだが、柔らかい水流はあったほうが望ましい。

代表的な浮き草と特徴

浮き草にはさまざまな種類があり、見た目や特徴も異なります。育て方のコツ(つまずきやすい点)も微妙に異なりますので、ここでは要点だけ押さえます。品種ごとの詳細は、当サイトの水草図鑑もぜひ覗いてみてください。

アマゾンフロッグピット

丸くて大きな葉が特徴です。根が長く、水質改善やメダカの産卵床に向いています。強光で葉が黄化、模様が入ることが多いです。直射日光、蒸れ、栄養不足に特に注意が必要です。

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サルビニアククラータ

フード状に巻く葉が特徴です。根は短いですがボリュームが出ます。エビの隠れ家としても最適です。寒さに特に弱く黒や茶色に変色しやすいです。水温低下、蒸れ、栄養不足に特に注意が必要です。

フィランサスフルイタンス

赤く染まる葉が特徴です。条件が合うと根まで真っ赤に染まります。水温や光量などの条件で葉の色が変わります。水温低下、水質悪化、スネールなどによる食害に特に注意が必要です。

アオウキクサ

とても小さく緑の葉が特徴です。主に光量の差で大きさに変化が出て、暗いと葉がさらに小さくなります。光量不足、水流による絡まり、水温低下に特に注意が必要です。

ホテイアオイ

大きな葉と葉の根元にある浮き袋が特徴的です。条件が合うとどんどん増えますが、草体が大きく、痛みが目立ちやすい面もあります。光量不足、水温低下、栄養不足に特に注意が必要です。

ドワーフフロッグピット

アマゾンフロッグピットに似ていますが、葉が一回り小さく、厚みもあまり出ません。調子が良いと葉に虎柄の縞模様が入ります。育て方はアマゾンフロッグピットと同様です。

セットアップの基本

浮き草は室内の水槽や、屋外のビオトープで飼育することができます。ここでは、それぞれの育成環境の作り方について解説します。

室内小型水槽

60㎝以上の大きな水槽はもちろん、30㎝水槽や小さな容器でも浮き草は飼育できます。

  • 照明:1日8–10時間。光量は中~高程度に調整します。小さな容器であれば日当たりの良い窓辺でも構いません。
  • 水温:冬場はヒーターを導入することで一年中育てられます。
  • フィルター:投げ込み式や上部濾過など水槽に合わせて設置します。水流で葉が沈まないように注意が必要です。小さな容器であれば頻繁な水換えで代用可能です。
  • 換水:週1回 30~50%換水が目安です。小さな容器であれば毎日半分程度入れ替えましょう。
  • 栄養:メダカや金魚、エビなどと同居させて補えます。栄養不足を感じるようであれば、週に1~2回程度、少量の液肥添加を検討します。

ベランダ・屋外ビオトープ

春~秋にかけて、ベランダや庭など屋外のビオトープでも飼育が可能です。

  • 日光:太陽光だけでOKです。特に真夏はすだれなどで直射日光が当たらないようにします。
  • 水温:秋が深まるころから枯れ始めるため、越冬をあきらめるか室内などに移動します。
  • フィルター:屋外用フィルターがあるのが理想ですが、なくても大丈夫です。なるべく大きな容器で水量を確保、こまめな水替えを心がけます。
  • 換水:できれば水を入れ替えたほうが良いですが、足し水だけでも大丈夫です。週に2回程度できると調子が良くなります。
  • 栄養:メダカや金魚、エビなどと同居させて補えます。雨水も入るようにすると良いです。栄養不足を感じるようであれば、週に1~2回程度、少量の液肥添加を検討します。

レイアウト術

浮き草は水草にはないかわいさや魅力があります。水面に浮くため、上から見たときの映えを作ることが可能です。レイアウトでは下記に気を付けると美しさが増します。

  1. で表現する:青々としたアマゾンフロッグピットと真っ赤なフィランサスフルイタンスの対比を作る、アオウキクサの群れの中に大きなアマゾンフロッグピットを主役として鎮座させるなど、複数種の浮き草を混ぜるのがおすすめです。
  2. ボリュームを持たせる:数株は寂しく見えます。ある程度の塊で配置すると美しくなります。
  3. “余白”を残す:逆に水面が埋まるほど密生させると見栄えが悪くなります。3割程度の抜けを作ることで、見た目のバランスと浮き草の健康を維持できます。
  4. 定期的にトリミングする:葉や根は枯れだけでなく、老化でも色が悪くなります。定期的に剪定することで美しく、健康に育てることができます。
  5. フロート(浮き草)リングなどのグッズを使う:フロートリングは浮き草を水流から守るだけでなく、丸・楕円・三日月の形など、人工的な遊びを加えることが可能です。

トリートメント&日々のルーティン

浮き草は浮かべるだけでも育てることができますが、日々簡単なお手入れをすることでより健康的に、美しく育てることが可能です。下記がチェックリストです。

  • 定期的な水換え:週1~2回が目安。急激な水温と水質の変化には注意しましょう。真夏は特に水が減りやすいので足し水も行います。
  • 定期的なトリミング:古くなった葉、痛んだ葉をカットして新芽に栄養を送ります。
  • 状況に応じて栄養添加:生体がいない、栄養不足を感じる際には液肥を少量添加しても構いません。
  • 日除け通気の確保:真夏の直射日光にはすだれなどで対策します。特に室内など、空気が動かず蒸れる場合は定期的に通気しましょう。

根と葉でわかる調子の見極め方

健康で元気な浮き草は、色つやが良く張りがあって、根も太く長くなります。このような状態から逆算した不調の兆しをつかむことで、早めの対処が可能になります。ここでは多くの浮き草に共通する調子の見極め方と対処法を解説します。

葉が黄色くなる

枯れや不調のサインです。水温や水質、栄養を見直すことから始めましょう。また成長や増殖はしているのに葉の調子が悪いというときは、窒素などの栄養過多、光量が強すぎる場合もあります。

根が短い、茶色い

水質悪化や水温低下、栄養不足などが考えられます。また物理的に水流が強すぎる場合もあります。これらの環境を見直してください。

葉が白っぽい

栄養不足や、直射日光による葉の溶けが考えられます。日陰に移して、少量の栄養を与えます。

葉の表面がぶよぶよになる

蒸れが原因で葉が痛んでいる可能性があります。風通しの良い場所に移動したり、室内水槽であれば蓋を外すなどの対策が有効です。

成長しない、増えない

水温、光量、栄養を確認しましょう。株全体が小さく、葉の色も悪い場合はいずれかがあっていない可能性があります。

コケの予防と対処

栄養過多や水質悪化などでコケが出ると、水槽やビオトープの見栄えは一気に悪くなり、浮き草の健康にも悪影響を与えます。まずはそもそもコケが発生しないように予防することが重要です。また、コケが発生してしまった場合でも、適切に対処することで被害を最小限にできます。

コケ予防のルーティーン

  • 照明:強すぎる光はコケの原因になります。中光量、8–10時間から始めます。
  • 栄養:栄養過多はコケ発生に直結します。給餌多めの環境は液肥は無しにするか、控えめにします。
  • 換水:水質悪化もコケを助長します。週1~2回、必ず水替えを行います。
  • 掃除:枯葉・古根などのごみを物理除去することも有効です。
  • 水流:水が滞留すると様々な悪影響が出ます。エアレーションや風の力で弱い水流をつくるのも工夫の一つです。

コケ発生時の対処

コケが発生してしまった場合は、まずはコケを物理的に除去します。その後、換水を行い水質を調整します。水がきれいになったら、最後に飼育環境を整えましょう。飼育環境は上記の予防ルーティーン通りです。

【おまけ】マツモは、浮き草?

マツモは根を持たない沈水植物です。根がないため底床に植えず、水面~中層に浮かせて育てるのが一般的です。見た目や育て方が「浮き草」に近い部分が多いため混同されがちですが、分類上は別グループです。浮き草とマツモの育成上の違いを表にまとめました。

浮き草マツモ
位置水面に葉、根は垂らす水面~中層に茎葉(根なし)
光の当たり方水面直下の強い光を受けやすい水面~中層で中~高光を選べる
水流耐性弱流が基本(葉裏めくれNG)中流までOK(ただし“揺らぐ程度”)

マツモと浮き草育成時の注意点

分類上は別グループでも、マツモと浮き草は共存できます。同居させる際の注意点は下記のとおりです。

  • :浮き草に合わせた中光量・8–10hでOKですが、浮き草を密にするとマツモまで光が届かず枯れてしまいます。
  • 水流:水流も浮き草に合わせて弱めに調整するとよいでしょう。
  • 栄養:どちらもよく吸収しますが、餌多めの環境なら与えなくても大丈夫なので、様子を見ながら添加します。
  • 水温:25℃前後をキープでどちらも健康に育ちます。

まとめ

浮き草は手軽に育てることができ、水面を美しく彩ってくれる魅力的な水草です。初心者の方でも簡単ですが、より美しく育てるためには解説したコツを押さえ、日々の最低限のメンテナンスを行うようにしましょう。

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