水草に必要な栄養を体系的に解説|三大要素・中量要素・微量元素の役割と、症状から栄養不足を逆引き
水草育成で「枯れる・変色する・大きくならない・葉が薄い・赤くならない」といった悩みの多くは、光・CO₂・水質・栄養などの過不足やバランスの崩れが原因です。本記事では特に栄養に焦点を当て、三大栄養素/中量要素/微量元素を体系的に整理します。
目次
水草の栄養フレーム
水草を構成する栄養素は三大栄養素(多量要素)、中量要素、微量元素に分けられます。ここでは、それぞれの主な栄養素について、育成上のポイントを解説します。なお炭素(C)、水素(H)、酸素(O)については、水やCO₂から供給され、最も重要な栄養素といっても過言ではありません。この記事では主に餌やフン、肥料などから供給される、それ以外の栄養素について取り上げます。
1. 三大栄養素
- 窒素(N):葉・茎の全体成長を担う主燃料で「葉肥」といえます。欠乏すると古葉から黄化し、全体が痩せ、成長が停滞します。過多になるとコケ活性化、赤系の発色低下が起こります。
- リン(P):エネルギー移送の要で、茎の分岐、根の伸長や開花を促進する「実肥」といえます。欠乏すると暗緑化・成長鈍化、若葉小型化が発生します。極端に不足すると赤みも出にくくなります。過多になるとコケの誘発要因になります。
- カリウム(K):光合成や炭水化物に関わり、根の発育も促進する「根肥」といえます。細胞の健全化にも関連するため、欠乏すると葉面にピンホールが開いたり、葉の厚みが失われたり、縁が黄化します。過多になると他の要素と拮抗して吸収を阻害します。
2. 中量要素
- カルシウム(Ca):細胞壁形成・成長点、新芽形成を助けます。欠乏すると新芽のねじれ・奇形、頂芽の停止が発生します。
- マグネシウム(Mg):葉緑素の中心となる元素です。欠乏すると古葉の葉脈を残して黄化します。
- 硫黄(S):アミノ酸・タンパクを合成します。欠乏すると新葉に黄化が出ることがあります。
3. 微量元素
微量要素は、必要な量は少ないものの、植物の生命活動には不可欠な栄養素です。
葉緑素の働きに必要
- 鉄(Fe):クロロフィルの合成を補助し、発色を助けます。欠乏すると黄化、赤系の発色不良の原因になります。
- マンガン(Mn):光合成を助けます。欠乏すると細かな斑点型の黄化が起こります。
- 亜鉛(Zn):成長の源となる酵素を助けます。欠乏すると小型化します。
- 銅(Cu):微量は必須の栄養素ですが過多は毒性を持ちます。特に甲殻類(エビ類)にとって危険です。
- 塩素
酵素を構成
- モリブデン(Mo):肥料の窒素を「燃料化」するための点火役といえます。欠乏するとNの利用不全となります。
- ニッケル
細胞の形成と維持
- ホウ素(B):細胞分裂、新芽の発芽を助けます。欠乏すると新芽が壊死し、成長点が停止します。

水草タイプ別の「栄養要求」と設計思想
栄養素の役割と水草タイプの特徴から、栄養要求の量やバランスは品種(タイプ)ごとに異なると言えます。ここではタイプ別に必要な栄養素を考察します。
有茎草(例:ロタラ・ルドウィジア)
- 特徴:高速成長・栄養消費量が大きい。N・P・K+微量(特にFe)が安定供給されるとボリュームが出る。
- 赤系の発色:Nをやや抑えめに、Pは不足させない、Feなどの微量元素を切らさないのが定石です。CO₂・照度・水流などの外部環境も必須です。
- 注意:K欠乏のピンホール、Ca/Mg不足の新芽不良、Fe不足の赤抜けに注意しましょう。
浮き草(例:アマゾンフロッグピット・サルビニア)
- 特徴:CO₂は空気から潤沢に得ることができるため、水中養分(特にN・K・Mg)の需要が高いです。また日照が強いほどFeや微量元素の切れが表面化しやすいので、少量・高頻度で安定させるのがポイントです。
- 管理のコツ:いきなり給肥や強い日照を与えず、まず流れ(表面の淀みすぎを解消)→間引きを行い、育つ環境を整えた上で給肥→光の順で最適化しましょう。
- 注意:三大要素の要求は高いですが、生体多めの環境では餌などで供給されるため過多はコケの発生につながります。
ロゼット・陰性系(例:エキノ・クリプト・アヌビアス)
- 特徴:成長は中〜低速で遅めのため、三大栄養素の要求は少な目です。
- 注意:Ca不足で新葉奇形、Fe不足で淡色化につながるため、中量要素は補給します。一方で急激な水質変化で溶け(特にクリプトコリネ)につながるため、ドカ入れには注意が必要です。

Fe(キレート)の重要性と維持設計
鉄(Fe)は、水草の色と光合成を支える“微量栄養の要”です。特に赤系・新芽の葉色や透明感に直結しますが、水中では酸化・沈殿しやすく、「あるのに吸えない」欠乏が起こりやすい元素でもあります。そのため、キレート化(Chelate)された形で補給するのが基本です。
キレートとは、鉄イオンを有機酸などで“抱え込んで安定化”する技術で、代表的なものに DTPA(中性〜弱アルカリに強い)や EDDHA(高pH向け)があります。これにより、酸化・沈殿を防ぎつつ、水草が必要な分だけ吸収できる状態を維持します。
症状から逆引き:栄養不足・過多の診断表
| 症状(目に見えるサイン) | 主要因(優先順) | 補足チェック |
|---|---|---|
| 古葉から黄化・全体痩せ | N不足 | 魚が少ない・換水過多/給肥不足 |
| 成長鈍化・暗緑・小型化 | P不足 | リン酸ゼロ運用の行き過ぎ |
| ピンホール・縁黄化 | K不足 | まずKを補充、改善なければCa/Mgも |
| 新芽の黄化(失緑) | Fe不足 | 赤系の発色不良も同時発生 |
| 古葉の葉脈間黄化 | Mg不足 | GH低すぎ・Mg供給なし |
| 新芽の奇形・ちぢれ | Ca不足/B不足 | まずCa、改善乏しければ微量バランス |
| 赤くならない | N過多/Fe不足/光不足 | N下げ+Fe供給+CO₂・光見直し |
| 黒ヒゲ・糸状コケ | CO₂不安定/光過強+栄養偏り | CO₂安定→光を落とす→栄養比を是正 |
| 葉が薄い・透ける | 総栄養不足/CO₂不足 | 養分とCO₂を同時に底上げ |
【初心者向け】水草の栄養管理の流れ
水草に給肥を行う流れについて、初心者にも分かるように解説します。
有茎草
- 現状把握
- 水槽サイズ、生体量、光量、CO₂有無をメモ
- できればN/P/K/Feの簡易テストを行い、どの要素が不足しているかを確認
- ベース作り
- 週1換水(30–50%)を固定化し、水質を安定させて吸収効率を一定に保つ
- タイプに合った総合液肥を規定量の7割から開始
- 三大栄養素の最適化
- Nが常に0付近→窒素を追加(魚が少ない水槽で起きやすい)
- Pが常に0→リン酸を少量ずつ補う
- コケが出る→まず光を落とす/点灯時間短縮、同時に古葉・堆積物の掃除→換水でリセット
- 赤系の発色チューニング
- Nを保ち、Pは不足させない
- Feを切らさない(新芽や赤系の発色を維持するため)
- CO₂安定+中〜高光(栄養が整ってから光を上げる)
浮き草
- 現状把握
- 屋内(光量)、屋外ビオトープ、容器のサイズ、生体量をメモ
- できればN/P/K/Feの簡易テストを行い、どの要素が不足しているかを確認
- ベース作り
- 週1〜2の足し水を固定化し、蒸発や濃度変化によるストレスを防ぐ
- タイプに合った総合液肥を規定量の7割から開始
- 三大栄養素の最適化
- Nが常に0付近→窒素を追加(魚が少ないビオトープで起きやすい)
- Pが常に0→リン酸を点滴的に補給
- コケが出る→物理除去、同時に古葉・堆積物の掃除→換水でリセット、N、Pの見直し
- 美しい姿を保つチューニング
- Nを保ち、Pは不足させない
- Feを切らさない(新芽や発色を維持するため)
- 液肥は薄く、高頻度で投与
- 大雨の後などで水が入れ替わった場合は、養分が薄まるため追肥を行う
- 液肥の投与は朝または夕方が理想で、強日照直前は避ける

よくある落とし穴と対策
- 「光だけ強くする」問題:栄養・CO₂が追いつかず、葉焼け・コケに直行。
- 「K軽視」問題:ピンホール・縁黄化はまずKで改善を見る。
- 「微量の入れすぎ」問題:Cu等の微量過多はエビに致命的。規定量厳守。
- 「換水をさぼる」問題:イオンバランスの崩れ・有機過多でトラブル誘発。
- 「テストしない」問題:最低でもNとPは時々測り、ゼロ運用の行き過ぎを避ける。
Q&A:初心者あるあるを解決
- 赤くならない → N高すぎ・Fe不足・光不足を順に是正。
- 葉が透ける → 総栄養不足+CO₂不足が疑い。
- ピンホール → まずK追加、次いでCa/Mg確認。
- コケが止まらない → 掃除→換水→光を落とす→栄養比率見直しの順。
- 浮き草が縮む → N/K/Mgの連続欠乏が多い。間引き+N/K/Mg補給。
- エビが弱る → Cu過多・急変に注意。微量は規定量以下から。
- テストが面倒 → N/Pだけでも月に数回測ると再現性が劇的に上がる。
- 換水が負担 → 低頻度化より定期換水の習慣化が安定の近道。
- 液肥の入れ時 → 朝:微量/夕:NPKなど分散。強日照直前の大量投与は避ける。
まとめ
水草の美観と栄養管理は切っても切り離せない関係であることが理解できましたか?また肥料の添加を行う場合も、それぞれの栄養素について理解し、育成している水草のタイプや品種、環境に合わせて適したものを選ぶことで、育成レベルがぐんと上がります。


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